幸せの授業 ∼忘れられない先生たちとの記憶から∼ 後編
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続きです。
これまで多くの患者さんを診させて頂きました。
中には病名が付かないような
症状を持たれた方もいらっしゃいました。
その患者さんは生まれつき
顔など、身体の「部分」が欠けていて
また（指先など）身体が徐々に溶け出す病気をお持ちでした。
痛くて苦しい症状は勿論、
容姿の面でも、とても辛いご経験をされた
ということが想像出来ました。
でもその方はいつもとても素敵で、
自然体で明るい、爽やかな太陽のような方でした。
僕はお話をする度に
『どうしてこんなに素敵なんだろう？
どの様な人生を歩まれてきたのだろう？』
と想像していました。
ある時、僕の心の中の質問に応えてくれるように
ご自分の過去をお話下さいました。
その方は、物心がついた時から
ずっと自分の容姿・病気・生まれて来たこと・
自分を蔑み、後ろ指を指す人たちを憎んできたそうです。
小さい時からずっと、
何十年も憎み、恨んできた。
でもそんな日々は、
ある一日を境に終わったそうです。
それはその方にとっては一生を変える特別な一日でしたが、
他の人にとっては、きっと何でもない当たり前の一日だった。
その方は、桜が満開を少し過ぎた晴れた日に、
日課の散歩をしていました。
その時、フワッと風が吹き、
たくさんのさくら吹雪が舞いました。
青空と白い雲。光。さくらと風。
これらを感じた時に、
自分の中に何か走る感覚があったそうです。
『私はこの世界を感じる為に生まれてきたの。
私がどんな形だとか、誰と違うとか、
そんなことはどうでも良くて、
私はこの世界を見て・聞いて・感じる為に生まれてきた。
それが私の生まれて来た意味。
って、その瞬間に感じられたの』
『それから自分や他人を恨む必要がなくなったの。
それを気付かせてくれる為の病気。とまで思えるようになったから』
僕はそれを伺った時、
しばらく涙が止まりませんでした。
※数年後、樹木希林さんが主演の「あん」という
映画を偶然見た時、『この患者さんがモデルなのか？？』
と思えるほど酷似した回想シーンがあり
驚いたシンクロがありました。
もし、ご興味があれば鑑賞下さい。
その後、僕は家族を持ちました。
妻は僕と深いコミュニケ―ジョンを求め続けてくれました。
そんな妻のお陰で、何でも話し合える
良い意味で支え合える、本当に仲の良い関係が築けています。
そして２人の子供たち。。
兄弟げんかはしょっちゅう。
叱ることもしょっしゅうですが、
そんな家族は僕にとっての全てで誇り。
自分のアイデンティティそのものと言えます。
これは様々な出会いを得て至った僕なりの考えですが、
人には「アイデンティティ」が必要です。
アイデンティティ＝自分を自分とたらしめるモノ
誤解を恐れずにいうと、自分が存在している意味です。
このアイデンティティを強く感じている時、
人は病気であっても、他者からの孤立を感じていても
幸せを感じることが出来るのかもしれない。
例えばアイデンティティが、
「会社や仕事」であると感じている人は、
会社を定年で辞める時、
大きな喪失感を感じるかも知れません。
（それが決して悪いという訳ではなく、
そういう場合が ”ある” というだけです）
ある人との関係が
アイデンティティだと感じていた方は、
その人間関係が無くなったと感じられた時、
耐え難い喪失感を感じるかもしれません。
ずっと通い続けた会社・行ってきた仕事・
中の良い親友・子供の自立・ペットや家族との死別…
それが自分のアイデンティティと感じていればいるほど、
これらの喪失は、耐えがたいものです。
逆にいえば、
『何にも変えられないものが自分にはあった』ということが、
「幸せ」の気付きになるかも知れません。
でも、僕が今、家族を突然失ったとしたら、
その様には思えません。
もしそう思えるとしたら
何十年も先のことだと思います。
それでもそう思えたら、きっと幸せなのでしょう。
それからこんな風にも感じます。
僕らはみんな、
何十億年という歳月をこの地球で過ごしてきました。
海の中で・海辺で波に打ち寄せながら
数えきれない季節の変化・
太陽の光・風の香り・波の感触・木の葉の揺らぎを感じ
生きてきた。
全ての動植物・人の中には
そんな体内記憶がある。
それを感じることが、
最も根本的なアイデンティティではないかと。
病床であっても、人の中で孤独を感じても、
太陽の光を・風を・波を・風を感じる。想像する。
その時、人は幸福を見出せる可能性があると、
そう教わりました。
まさに道元禅師が愛する人に残した時世の句のように…
だから僕らは、お金や権力や流行など
変わりやすいものにアイデンティティを感じるのではなく、
「家族」や「生命記憶」など、
出来るだけ最小単位のものを意識し、
愛し、大切にする。。
それがずっと探していた（僕なりの）幸せの答えです。
健康の知識・治療技術だけでない、
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全ての患者さんに感謝し、それを自分なりの形でて還元したい。
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